一般建設業許可と特定建設業許可はどう違うの?
建設会社として成長するにつれて1件当たりの受注金額が大きくなることが多いですね。
そうなると心配になるのが一般じゃなく特定の建設業許可が必要になるのではないか、ということ。
そもそも一般建設業許可とか特定建設業許可とかってどう違うのか、どんな時に必要なのかとても分かりにくいと思いますので、こちらで解説したいと思います。
目次
1.特定建設業許可が必要なとき、一般建設業許可で大丈夫なとき
2.特定建設業許可取得のための厳しい条件とは?
3.特定建設業許可から逃れる方法ってある?
1.特定建設業許可が必要なときは?
一般的によく知られているのは500万円以上の工事をする場合に建設業許可が必要だということです。※建築一式の場合は1500万円以上。
500万円以上ということは皆さんよくご存じなのですが、なんか大きな工事の場合は特定建設業許可が要るらしい、というのは知っていても条件についてはわりとあやふやです。
まあそれも当然で、分かりにくいんです。
まずは分かりやすく下の図にまとめてみました。
※図が下手でかえって分かりにくかったような気もしますが・・
結局は元請の場合に判断されるだけなので、下請工事であればどんな工事であっても、どんな受注金額になっても、一般の建設業許可で事足りるわけです。
元請の場合は下請業者に一つの工事で総額4500万円(建築一式の場合は7000万円)以上工事をさせる場合だけが特定建設業許可にしなければなりません。
それ以外は元請であっても一般建設業許可で全く問題ありません。
元請でなおかつ4500万円(建築一式の場合は7000万円)以上下請に振る場合だけ、と考えてもらえたら結構基準は簡単に判断できるかなと思います。
なぜ、このような種類の分け方をしているかですが、建設工事は大きな現場になると多数の業者さんが関与することになり、下請、孫請にとどまらず数次請けまでいわゆる重層下請構造になっています。
そんな中で元請の業者が倒産してしまうと、数多くの業者が被害を受けてしまうことになります。連鎖倒産になる可能性もありますよね。
それを防ぐために元請で一定規模以上の工事を受注する場合は厳しい基準を設けているわけです。
以上で特定か一般かの判断はできるようになったと思いますが、やはり問題はその特定建設業許可が取れるどうか。
特定建設業許可に関しては上記のように下請を保護するということがありますので一般建設業許可に比べると非常に厳しくなっています。
2.特定建設業許可取得のための厳しい条件とは?
特定建設業許可を取得するために要求される一般建設業許可よりも厳しい条件は以下のものが挙げられます。
(1)資産の要件
(2)資格者
(1)資産の要件
一般建設業許可の場合、500万以上の自己資本(貸借対照表の中の純資産合計の欄)があるか、残高証明書で500万円以上のものを用意できれば問題ありません。
さらに、5年後の更新の許可申請では資産については一切不要になります。
それに比べて特定建設業許可の場合、お金に関しては3つの条件があります。
その1.資本金が2000万円以上で自己資本が4000万円以上なければなりません。
※会社を設立してすぐに特定建設業許可が欲しい場合は4000万円以上の資本金で設立しなければなりません。
※自己資本の額は会社の決算書のうち、貸借対照表の純資産合計の額になります。これが申請直前の決算書で4000万円以上ないといけません。
その2.流動比率といって(流動資産/流動負債)×100%で表される数値があるのですが、その数値が75%以上なければなりません。
※資産に比べて負債が多すぎるとダメということですね。
その3.欠損の額が資本金の20%を超えてはいけません。
欠損の額とは、単純に説明すると今までの会社の累積の赤字合計になります。
例えば資本金が5000万円の場合はその20%ということで1000万円までなら累積赤字があっても大丈夫ということですね。
累積が黒字なら全くここは問題のないところです。
そして、これらの資産に関しての要件は一度クリアしたらOKというわけではなく、5年経過ごとの許可更新の際にも必ずこの条件を満たしておかなければなりません。
更新許可申請の際にこれらの3つの基準を1つでもクリアできなければ一般建設業許可を取り直すしかなくなります。
(2)資格者
資格者に関しては基本的には1級の施工管理技士、技術士などの資格者でないと営業所の専任技術者になることができません。
特に指定7業種(土木、建築、電気、管、鋼構造物、舗装、造園の7業種の工事)については1級か技術士でないといけません。
※その指定7業種というのが導入された平成元年あたりに大臣特別認定という仕組みがあり、講習等を受けることで1級に該当すると認定されたのですが、今は実施されていません。
指定7業種以外の業種であれば、指導監督的実務経験が2年以上あれば1級の資格と同等とみなされます。※指導監督的実務経験とは元請で受注した4500万円以上の工事を監督の立場で携わった経験を言います。
さらにこの指導監督的実務経験ですが、2年間というのは工事の期間を通算して超えないといけませんから、携わった工事の契約書の工期をすべて加算して24か月以上にならなければなりません。その分の契約書等を証拠としてそろえて証明することを考えると1級資格の方がやりやすいでしょう。
ただ、機械器具設置工事のように1級施工管理等の資格がなくて、技術士しかないものもあり、特定建設業許可を取るのが非常に困難になる業種もあります。
3.特定建設業許可を逃れる方法ってある?
特定建設業許可が必要なときは分かった。
とは言っても、一般建設業許可しか持ってなくて、急に大きな工事を元請でやってほしいと言われることもあると思います。
頑張っている会社さんだからこそですし、当然そんなビジネスチャンスは逃したくありません。
だからといって上の2.の条件は急には満たせないし、悠長に申請している時間もない・・。
そのようなお問い合わせをいただくこともよくあります。
何億もの工事になってしまうと少々工夫したところで逃れられないと思いますが、特定建設業許可がぎりぎり必要になる工事なら避けられることもありますので書いておきます。
要は問題になるのが、下請に4500万円以上などの大きな金額の工事をさせるというのが問題になるわけです。
この金額、下請にさせた工事ということはもちろんですが、それに必要な材料を下請業者が準備した場合は、下請工事の費用には材料代も含まれてきますから請求されるわけですから、下請工事の代金が大きくなってしまいますね。
この材料費を元請が購入して下請業者に支給し、工賃だけを下請工事の費用にすることができれば、下請代金が抑えられることになります。
例えばプラントのような機械を設置する工事で考えてみます。
このような場合は機械代金がたいてい高額になります。
例として、機械本体が1億円、下請業者さんにやってもらう据え付け設置工事が1000万円とします。
機械も下請業者が持ち込み、据え付け工事をしてもらうとなると、下請工事の代金が総額1億1000万円となり、当然特定建設業許可が必要になります。
それを、機械本体を元請業者が準備して支給し、据え付け設置工事だけを下請けしてもらったとすると下請工事の代金は1000万円。
一般建設業許可でよくなりますね。
このように材料なども下請け業者さんに準備してもらうと下請工事の代金が大きくなってしまいますが、元請が準備して支給すると下請工事の代金は抑えられます。
ある程度限界はあると思いますが、ぎりぎりのラインであればこういう手を使うのもありですね。
元ページ:建設業許可の取得条件について
参考ページ:建設業の大臣許可と知事許可の違いについて